しがらみのない新作映画評

某映画ライター。主に公開前の新作映画について書きます。ネタバレなし。★の数は個人的な評価です。

圧巻の映像表現『海獣の子供』

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どう見てもアニメ向きじゃないはずの五十嵐大介の繊細な描写が、違和感なくアニメーションになっていることにまず驚く。その上、映像表現がすさまじい。風景や光、水、生き物たちの生々しさに加えて、後半の怒涛の展開は超アシッドだ。アニメーション制作は『鉄コン筋クリート』のSTUDIO4℃。こりゃすごい。

海獣の子供』は五十嵐大介の代表作のひとつ。ある夏、中学生の琉花は、ジュゴンに育てられたという兄弟と出会い、生命の神秘に触れることになる。

弟の“海”は純真無垢、兄の“空”は人の心を見透かしているような怖さがある。2人とも長く海で生活していたため、陸上生活に適応しきれていない。特に兄の“空”はその傾向が顕著で、徐々に身体が弱っていく。しかし人間の科学では、“空”の身体の中で起きていることを把握しきれない。

光る隕石が海上に落ち、海の生き物たちは大移動を始める。“ソング”が生き物たちを導いている。何かとてつもないことが起きている。しかし、それが何なのか、人間たちにはわからない。“海”と“空”を除いては。

原作を読んだ人ならご存知の通り、後半から物語は怒涛の展開を始め、理解が追いつかなくなっていく。身体が光る生き物たち、古い伝承、子守唄、“ゲスト”…。意味深で、意味不明なジャーゴンの応酬。そして加速していくサイケデリックな映像表現。

なんだかすごいものを観てしまった。

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