しがらみのない新作映画評

某映画ライター。主に公開前の新作映画について書きます。ネタバレなし。★の数は個人的な評価です。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

圧巻の映像表現『海獣の子供』

youtu.be どう見てもアニメ向きじゃないはずの五十嵐大介の繊細な描写が、違和感なくアニメーションになっていることにまず驚く。その上、映像表現がすさまじい。風景や光、水、生き物たちの生々しさに加えて、後半の怒涛の展開は超アシッドだ。アニメーショ…

何も始まってすらいない『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』

ザ・スミスのフロントマン、モリッシーの若き日を描いた伝記映画。 有名ミュージシャンの伝記映画というと、つい『ボヘミアン・ラプソディ』の二番煎じかと邪推してしまうが、そんなことはない。その2作品はまるで方向性が違う。『ボヘミアン・ラプソディ』…

幸福な7年間『長いお別れ』

中野量太監督の前作『湯を沸かすほどの熱い愛』が泣かせる話だったので、認知症をテーマにした本作なんてボロ泣きに違いないと身構えていたら、いい意味で予想を裏切られた。 舞台はある平凡な一家。娘2人は既に自立し、老夫婦が2人で静かに暮らしている。し…

カルト、不条理、グロテスク『バイオレンス・ボイジャー』

宇治茶監督がたったひとりで作り上げた執念の作品(声優以外)。 宇治茶というのは、2013年に『燃える仏像人間』という怪奇アニメをつくったアニメーション作家だ。アニメーションと書いたが、実は正確には「劇メーション(劇画+アニメーション)」というジ…

現実は映画ほど甘くない『アメリカン・アニマルズ』

はたして、映画を真似した犯罪は成功するのか。 当然、『レザボア・ドッグス』や『オーシャンズ11』のようにスマートにいくはずがない。個人的にも、犯罪をあまりカッコよく描くのはどうなのかなと、以前から思っていた。 現実とフィクションを混同してしま…