しがらみのない新作映画評

某映画ライター。主に公開前の新作映画について書きます。ネタバレなし。★の数は個人的な評価です。

カルト、不条理、グロテスク『バイオレンス・ボイジャー』

宇治茶監督がたったひとりで作り上げた執念の作品(声優以外)。

宇治茶というのは、2013年に『燃える仏像人間』という怪奇アニメをつくったアニメーション作家だ。アニメーションと書いたが、実は正確には「劇メーション(劇画+アニメーション)」というジャンルらしい。造語かと思いきや、1976年のテレビアニメ『妖怪伝 猫目小僧』で使われたマイナーな手法で、それを現代に復活させたのが宇治茶なのだ。

宇治茶の絵はとても上手いが、なんだか不穏で気持ちが悪い。そして予想通り、ストーリーはさらに気味が悪い。

とある山奥の村で、ボビーという金髪碧眼の主人公が、あっくんという友だちとともに、「バイオレンス・ボイジャー」という謎のアミューズメント施設に潜入する。おそらく舞台は日本。ボビーの生い立ちなどは一切不明だが、細かいことは気にしても無駄だ。

この「バイオレンス・ボイジャー」はアミューズメント施設のふりをして、迷い込んだ子どもたちを捕獲し、謎の怪物のエサにする恐怖の場所だったのだ。ボビーとあっくんは、ほかの子どもたちを助けるために立ち上がる、という話。

ホラーという触れ込みになっているが、「怖い」というよりも、やはり「気持ち悪い」というのが率直な感想。ストーリーも理不尽だ。観ながらなんとなくフランツ・カフカの「変身」を思い出した。仮に宇治茶が「変身」を劇メーション化したらハマりそうだ。つまり、雰囲気としてはそんな感じ。

観る人をかなり選ぶことは間違いない。だけど好きな人は、とことん好きな世界ではないだろうか。

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